ダーゼン販売中止

門前からの風邪と思しき患者さんには漏れなくこのダーゼン 10mg 錠が処方されていた。それを「痰を切るお薬です」と説明しながらおそらくこのピンクの薬を何百回と出していた僕。
果たして僕と僕と同業の人たちには、この今や効き目のないとされた薬を出し続けたことの責任はあるのだろうか。「おい何が痰を切るお薬ですだ何の効果もない薬出しやがって金返せドロボー薬局」と全国一斉集団訴訟になったら僕も一緒に訴えられちゃうのだろうか。
しかし添付文書にはきちんと「有用性が認められている」と書かれているし、処方する医師も調剤する薬剤師もそれで判断するしかない。製薬会社でもなければ検証を行って「これは効きますこれは効きません」と判断するのは不可能だ。
効き目がないと知りつつ調剤すれば債務不履行で民事的な責任が問われるのだろうが、過誤でもなく添付文書という信頼できる情報源によって効果を判断して調剤したのだから、責任はおそらくないということになる。しかしモヤモヤが残る。
今回のダーゼンは「有効性が認められない」という問題だったが、今の日本では発生する確率は限りなく低いだろうが「副作用とは異なる重大な毒性が認められた」という問題だったら社会的な大問題だ。その場合でも何の前兆もなければ現場の人間についてはおそらく法的な責任はないとされるのだろうが、「MR もそんなこと言っていなかったし添付文書にもそんなこと書かれていなかったので予期しようも知りようもありませんでした」で済まされるのだろうか?
分からない。取りようがない責任なのは確かだが、その薬を調剤して渡してしまうのも事実だ。分からない。これ以上考えるとノイローゼになってしまいそうだからやめよう。