何も考えていない

何故この資格を目指すに至ったかと訊かれても、正直なところは何も考えないまま過ごしていたら取っていた、というだけなんだよな。身近に似たような職種の人間もいないし、ましてや自分が病弱だったのでとかいう濃いエピソードもない。何で大学でこの学部を選んだのかも分からない。だからこそ志望動機欄や面接の受け答えには困る。
あの頃の自分には強い意志がなかった。将来の展望も描いていなかった。かと言って、その時現在でさえも有意義に生きていなかった。趣味も特になく、ただ学校に通って、ノートにカリカリとサインコサインしているだけだった。だから思い出も特にない。卒業アルバムには、医学部へ行ったらしいちびっ子と一緒に笑って写っている写真が一枚載っているだけだ。
内面が虚ろであるから、何を言っても嘘臭く聞こえてしまうのだろう。何も考えていない人間と内面が満ちている人間の両者が「人の役に立ちたい」と同じことを言ったとしても、その言葉に裏付けがあるかないかで明らかな違いが見えてしまう。何百人と志望者を見てきたはずの採用担当者が相手なら、なおさらその違いはくっきりと浮かび上がるはずだ。
と、やっぱりこの職種に就くのは無理なのではないかと悩む。ウダウダ言っている自分は醜いな。