実家2

実家には本当に何もない。
かつて高校生の頃まで暮らしていた場所だけれども、生活の拠点が既に他の場所に移っているから何もない。持て余す暇を潰せるものが、ラジオかテレビかあまり興味もない本くらいしかない。十数年前に買ったアコギがあるけれども、音の為に夜中は弾けたものじゃない。昼間でさえ思い切り弾けない。
実家に持って帰ってきているものは携帯電話と財布と型遅れのノートパソコンくらいだ。熱中しかけているベースとアンプを持って帰ることなんてできやしない。だから一人の時間には何もすることがない。
もはや僕にとって実家という場所は、過去に過ごした場所というものになってしまっているのだろう。僕は未来へ向けて実家を出て行ったから、実家にはもう今の僕の興味を満たすものが何もなくなっている。
それでも家族と過ごし談笑していると、僕の独り善がりな興味を満たすものが何もないという虚ろさなんてほんのちっぽけなものに思えてくる。家族が皆健康かつ元気でいるということは、それだけでも幸せなことなんだろうと思う。
だからこそこの認知の歪みが引き起こす精神的な問題とをどうにかして家族を安心させなければならないのだけれど、数年来悩まされ続けていて未だに完全に良くはなっていない。完全に治すということを諦めるか、あるいは自分の中に確実にある甘えを徹底的に抑え込んでもっと自分を追い込まないと行けないのかも知れない。