散財未遂、懲役三年

ニートは中途半端に預金があるとまだ働かないで済むと思うから、いっそのこと金を全て使ってしまえばいい。普段欲しいと思っていながら高くて手も出せなかったものを買い漁る。十万円の預金があるニートは十万円分の買い物をする。百万円の預金があるニートは百万円分の買い物をする。そうしてゼロになった預金通帳を見れば、さすがにニートであっても今後の危機感を覚えるだろう。ニートでいられる猶予期間を過ごすゆとりもなくなってしまうから、嫌でも働かざるを得なくなる。微々たるものではあっても経済効果に貢献するわ、欲しいものは手に入るわ、働き出せるわで、ニートにとっても社会にとっても一石が何鳥にもなる。
そう思って Amazon でポチポチしていたら悲しくなった。今使おうとしているのは、二年前に半年間働いて貯まったお金だ。嫌なこともあれば、嫌なことばかり、嫌なことしかなかったあの日々で働きたくないと思いながら嫌々働いて得たお金だ。それが今、果たして本当に必要性があるのかどうかも分からない電器製品や語学の本に変わろうとしている。
二日後には Amazon の茶色い段ボール箱で一杯になった部屋で僕は何をしているんだろうと思うと、とても「注文を確定する」を押す気にはなれなかった。電器製品は箱から出された後にろくに使われないまま埃を被るに決まってる。語学の本なんて最初の数ページをパラパラめくっただけで積まれて放ってかれるはずだ。今までろくに習得した言語もなく英語さえマスターしていないというのに今さら何を新たに習得する気になれるんだろう。一石何鳥なんてとんでもなかった。
お金って何だろう。僕は上手にお金を使えない。