日食

本州の天気は事前の予報通りだいたいどこも曇りだったから、日食グラスは文字通り日の目を見ることなくタンスの奥にしまわれてしまったんだろう。最も長時間皆既日食が見られるはずだった悪石島に至っては、ダイヤモンドリングが見られなかったどころか嵐に近いほど天気が大狂いして避難する騒ぎにさえなったらしい。運が悪い人たちもいるものだ。やっぱり変な業者が日食グラスプレゼント商法なんて目に余ることをしでかしてまで儲けようとしたから、こんなことになったに違いない。
僕は部分日食で太陽の欠けるのさえ見る方法もなかったしそれなら見られないでもよかったから、部屋の中にいながらだんだん空が暗くなっていく様子が分かればそれでいいと思っていた。ところが朝寝坊をしてしまい、起きた時間が太陽が最大に欠ける時間をとっくのとうに過ぎていた。不覚だった。ただそれから後の時間に空が明るくなっていく様子は目に見えるほどではなかったので、どうせ暗くなるのも目に見えて分かるほどでもなかったんだろう。
それでも NHK のテレビ中継は秀逸だった。特に硫黄島から一人でぽつんと立ってのおじさんの実況は良かった。感情を過剰に露わにすることもなく、比較的淡々と周りの暗くなっていく光景と太陽の欠けていくのを解説していた。あれは誰だったんだろう。
それでその NHK の映像を誰かが youtube にアップロードするだろうと思っていたら、NHK 自身が公開しているというから流石公共放送、よくやっている。早速保存しておくことにする。