まだ働かなくていい

日曜日の雰囲気がする屋外の声を聞きながら、児玉清の「アタックチャンス」の掛け声がテレビから聞こえないので、今日って月曜日なんだよな、と気付かされる。ニートには曜日なんてあんまり関係ないんだけど。
久し振りにヘローワークのサイトを覗いて求人を調べた。相変わらずデザインが素っ気なくて楽しくない。いちいち条件入力とかしなくちゃいけないのも面倒くさい。
ヘローワークの求人には事業所名は載せられてないんだけど、施設概要をグーグルなんかで検索すると他の求人サイトでまるっきり同じ施設概要の文章を載せているのが引っ掛かることもある。暇潰しにそういうのを探して、ここの病院で募集しているのかと思っては遠いなあ面倒くさい通いたくない働きたくないとか寸評したりする。
そんなことをしていると、家から徒歩十分の病院が一名だけ募集しているのが分かった。近くていいんだけど、経験者求むみたいなことが書かれている。私の経験は半年です。そして今まで一年半無職です。こんなのが応募したら電話で門前払いされるだろうか。それとも面接で「この空白期間は一体何なんですか」とかこっちにとっては何の意味もないことを問われたり、「働く気がないなら一生ニートやっていた方が社会のためみんなのためですよ」なんてご親切にも余計なお世話千万のアドバイスを受けたりするだろうか。
まだ起こってもいない未来のことを心配しながら、「まだ働かなくていい」と頭の中で叫んでいる僕。こいつは今までも僕の中で圧倒的な存在感を示している。去年の今頃は「北京五輪が終わるまで働かなくていい」と言い、北京五輪が終わると「国会が解散されて次の総選挙が行われるまで働かなくていい」と言い、総選挙が行われそうな最近は「妹が大学卒業するまで働かなくていい」などと言っている。
本当にまだいいんだろうか、と頭の片隅でちょっとは思いながらやっぱり僕はそれに流されるように従って今まで働いて来なかったわけだけれど、いくら何でも妹が働き始めているのに兄の僕がニートを続けているのは、流石の僕でも恥ずかしい気分になってくる。一生「まだ働かなくていい」なんて言っていたら、僕は大学教授に言われたとおりに浮浪者になってしまう。妹に小馬鹿にされているうちはいいが、このままではいつかは縁を切られて他人にされてしまうだろう。そうならないためにも僕はしつこくてうるさい「働かなくていい僕」を黙らせないといけない。
でもやっぱり働くために動き出すのは総選挙が終わってからにしよう。夏は暑いし、何より働き出すには季節が中途半端だ。十月からでも遅くはない。それまでその近くの病院の求人が残っているといいけれど、多分残っていない。残っていたとしても、経験の浅い僕は多分雇われない。