ああ

頭が良くて目が良くて品行方正で家事もこなして兄思いで家族思いで彼氏ができても僕を一緒にご飯に誘ってくれたり僕が風邪を引いて寝込んだら「お兄ちゃんの日頃の行いが悪いんだよ」と言いながらも毎時間ごとに心配そうに様子を見に来てくれたり喧嘩をしても後を全く引かずにすぐ仲が修復したりと情緒も安定している素直な妹が欲しかった
が、そんなのは僕が勝手に都合良く作り上げた妹像であって、現実に実在する妹にもしこんなことを言ったとしたら「テメエの操り人形じゃねえんだよ」とばかりに一喝されるか呆れて閉口されるか、とにかくいい気はされないだろう。妹は妹で妹の性格があって生き方がある。家族とはいえ別個の個体である他人に「性格が云々だったら良かったのに」などと言われたら、人間内政干渉も甚だしい。僕だって同じようなことを言われたらいい気はしないはずだ。誰でもそうに違いない。
逆に言えば、相手を怒らせたい時、実際の相手の性格をそれとは真逆に等しいいかにも立派な性格と比較して非難すれば、容易に相手の頭に血が上るということになる。これは直接的に相手の性格について非難するよりも陰湿かも知れない。
しかし何故怒っちゃうのかと思うと、それを言われた相手自身も自分自身の欠点について把握しているからかも知れない。一度人格が形成されてしまえば、簡単には変えようもないのだ。変えようがないことを非難されれば確かに嫌だ。怒る。
理想は妄想の中に仕舞っておくしかない。