ヒエラルキー

諸君、私は犬だ! この職場という組織におけるヒエラルキーに逆らえぬ、愚かな犬なのだ! 即ち仕事とは過酷にも仕込まれた芸であり、給与とはその過酷さを受け入れた代償であることさえ疑うほどの餌に過ぎぬ!
見よ、私の主人とその家族と友人を! ヒエラルキーの上位に胡座を掻いている彼らは、冬の冷たい空気に打ち震える私のことなど意にも介さず、暖炉を囲んで温かな汁を啜りながら談笑などをしているのだ! そして唐突に私の名を呼び中へと温かく招き入れられた、かと思いきや、招き入れられたのは「私」ではなく、「私の芸」なのである!
そして私は踊る、踊る、踊る! 踊らされる! 初めこそ彼らは手拍子などをしながら私の芸を見てはしゃぐのであるが、次第に手拍子の音はまばらになっていき、遂には止んでしまう! もう誰も私の踊りなど見ていやしないのだ! だから私は踊るのを止めて外へ戻ろうとする、しかし何故か私は突然激痛と共に身体ごと宙を舞うのである! 床に打ち付けられ、逆さに見えたのは主人の険しい顔! そこで初めて私は、私を襲った事態――主人に足蹴にされたことに気付くのだ!
ああ、何という仕打ちであろうか! ――しかし無論、私などが彼らに逆らえるはずもない。私は犬なのだから。私は犬なのだから!


と叫んで職場中を駆け巡ったとしたら、危ない人扱いされるというか危ない。実際は今の仕事はそんなに過酷でもない。精神的に足蹴にされるようなこともない。
しかし、これまでの職種では認知したことのない独特のヒエラルキーが存在するのは確かだ。立場上、逆らえない人というのはいる。これも今の職種の立場と職場の性質を考えれば当然なのだが、職場の暗黙のルールから外れたある種の我が儘さえ要求される。その我が儘を受け入れたとして、誰が割を食うのか? 当然、ヒエラルキーの下位に属する人間だ。しわ寄せはいつも、立場の弱い人間に押し寄せる。
僕はその上からのしわ寄せを他の人に丸投げしようと思えばできる立場だが、そうできるほど心が強くない。だから背負い込むことになるんだろうな。ファッキンホーリーシットだね。