海の向こうの国の山火事じゃない

胃酸中和剤とコリンエステラーゼ阻害剤を取り違えた、って何と何をどうやって間違えたんだろう。ChE 阻害と聞いてウブレチドを思い浮かべたが、毒薬のウブレチドは金庫や施錠棚に置いてあるだろうからまさか(まともな薬局なら)取り違えるなんてないだろうし、アリセプトあたりか。
語感で間違えたとすれば似ているのはパリエットだが、普通 10 年も続けて投与しないだろうし、厳密には胃酸中和剤とは違う。制酸剤ならマグミットかも知れない。文字数と「ト」しか合っていないけれど。マグミットなら分 3 毎食後の処方も有り得るし、それで調剤するところをアリセプト 10mg を調剤して一日量 30mg なんて超えて一週間も飲んでいたら、間違いなく加量投与となって酷いこと以上のことになる。投与の必要がないのにアリセプトを投与すれば、加量投与でなくてもやっぱり酷いことになる可能性もある。
あるいは処方箋の内容をレセコンに入力する時に既にミスを起こしているか。ただそれでも、調剤支援システムなんかで出てくる紙なんか見ずに、処方箋の原本を見ながら調剤するはずだし、調剤後の監査だって原本を見ながらするはず。アリセプトが毎食後服用なんておかしいって気付くはず。それらを考慮していなかったってことだろうな。「忙しいから監査しなかった」とあったが、怠慢でしかない。
つーかこの薬局、薬歴管理や服薬指導時の説明はどうなっていたんだ? ずさん過ぎる。ただ患者の既往歴が脳梗塞とあるのも問題が起きた遠因かも知れない。薬歴の前回処方と照らし合わせて異なる薬が出ていたことに気付いていたり、服薬指導を行っていたりしたとしても、うまく意思疎通が行えなかった可能性もある。忙しい中で意思疎通の難しい患者に対して「あー認知症で新しい薬が出ているんですね今日はこれですねこれですね」と一方的な服薬指導になっていたのかも知れない。
やっぱり処方箋の処方薬だけから患者の病態を推測するなんて間違っているとしか思えない。

でもう一度新聞サイトを回ってみたら、「毒薬」、つまりおそらくウブレチドだったらしい。そんなに簡単に鍵開けちゃうの。ウブレチドと何をどうして間違えたのかも気になる。

後に新聞で詳細を見た

調剤用機器の設定ミスとか自動分包機の登録ミスとか書かれていた。ヒートで間違った薬を渡したとばかり思っていたが、一包化のミスだったらしい。充填した場所を登録ミスしたとか場所を間違って充填したとかという話なら確かに有り得そうだけれど、それ以前に日頃から分包機に毒薬を充填していたのか。
と、どこかで見たことがある。薬剤師になり立ての頃に勤めた薬局で、終業時に自動分包機から何らかの薬のカセットをガラッと取り出して、鍵の付いた引き出しに仕舞う光景。ウブレチドが処方されていた時はヒートからプチプチと入れていたはずだから、あれは多分マル向だった、はず。
全自動分包機は便利だが、最初から最後まで全自動というわけではなくて人の手が入らざるを得ず、そこにミスが入り込む余地があるから恐ろしいな。それを慮らずに「機械だから間違いがあるわけがない」と過信して錠剤の監査も怠ったんだろう。確かに一包化の監査は面倒臭いし時間も掛かる。僕はそれを利用して忙しい時間帯なのに却って丁寧に丁寧に監査して、処方箋の処理枚数を減らして薬歴を書く作業を減らしていた悪い人間。
今の職場は貧乏だから全自動分包機なんてない。全部錠剤をプチプチしなければならない。これはこれで良いのかも知れない。