一日

逃げようとしたあの日からちょうど一年が経ったか。一ヶ月前にも逃げた。もう逃げられない。というか逃げたくない。というか逃げたくなる環境に追い込まれたくない。
今日は休日前という予想通りかたまたまか、午前の終わり頃にハードな処方の一包化調剤があってイライラして物に当たってしまった。患者さんが目の前の椅子で待っているものだから焦ってしまって却ってミスを起こしてやり直し、三十分は待たせた。待たせているということに我慢ならないからイライラしたという訳だ。後続にライトな処方の人がいなかったのがまだ救いがある。
待たせたくないと言っても、一包化の場合は薬を出すにはかなり時間が掛かる。処方箋を読んで必要な薬を必要な分だけ棚から探して取る。それで一回 0.5 錠や 1.5 錠など半錠が含まれていると、一錠を専用のハサミでパチンパチンと半分に割らなければならない。そして用法ごとに薬をその都度に手撒きして、分包をスタートさせてガタンゴトンと一回に服用する分の薬が分包されて出てくるのを待つ。これがまた遅い。
食後だけならいいが、食前やら眠前やらが含まれるとかなりごちゃごちゃになる。今日のはこのパターンだったから、本当に待たせてしまった。人を待たせたくないから職種を変えたのに、何だか同じことになっている。そのくせ午後はヒマヒマだったのがさらに辛い。
帰りは快速特急なんかに乗らないとか思っていたが乗って帰ってきた。乗車駅のドアの開く方向に合わせて乗る位置さえ気を付ければ混雑なんて何てことはない。快速特急ならドアトゥドアで一時間も掛からないことに気付いたら、もう鈍行には乗れない。


と、一年前のあの日とは全く異なる夏の日だった。大変ではあるが、一年前のように苦しくはない。今のところは。
裏を返せば、今の場所で働いていてもいつ一年前のような苦しさが襲ってきてもおかしくはないのだ。それが来ないことを祈るしかない。