成人の日

僕には成人式の思い出がない。出席していないから当然なのだけれども、これは別に僕が小学や中学の頃の同級生にいじめられていてもう金輪際顔を合わせるのは勘弁だとかそういう事実があったからという訳ではなくて、大学入学時に住民票を下宿先へ移してしまっており出身の自治体から招待状が来ず下宿先の自治体からだけ来たものだから、縁もゆかりもない見ず知らずの人間ばかりと一緒に成人式に出たとしても周りが同窓会気分でわいわいと盛り上がるであろう中で僕は寂しく独りぼっちであることを余儀なくされるだろうしそれでは胸糞が悪い上につまらなくて仕方がないと思い出席しなかった。また単に出席するのが面倒臭いからという理由もあったのは言うまでもない。
別に送られてきた記念品の引換券で、実印の印鑑だけは受け取った。それは特に使う場面もなかったから今はもうどこかへ行ってしまった。受け取ったものが印鑑であったかどうかも曖昧だ。しかし近所の量販店の中の印鑑を売っている店へ行った記憶があるのできっと印鑑だったんだろう。
住民票を他へ移していても住んでいた自治体へ連絡をすれば案内状が送られてくるらしいが、当時は知らなかったので何もしなかった。知っていてもわざわざ帰らなくちゃならないのは面倒臭いから何もしなかっただろうな。当時は成人式で出席者が荒れている模様がニュースなどで大々的に取り上げられていた上に、成人式にわざわざ出席することの意義、延いては成人式そのものの意義もよく解らなかったし、実際には僕は出席する必要もない理由として住民票の問題を都合良く利用しているだけだったのかも知れない。今は出席しなかったことに特に何も後悔を感じていない。
それにしてもどうして成人式というものはこんなに日本中に広まって参加するのが当たり前であるかのようにスタンダードなものになったんだろう。日本以外の国で成人式のようなフォーマルな式典が行われるなんて聞いたことがない。何でも右倣えな島国文化な国だからだろうか? それとも着物業界がビジネスとして利用するために密接に絡んでいたりするのだろうか?
どうでもいいね。僕は「成人」とか「社会人」とかいう変な言葉で個人の意識を変えようという社会的な魂胆が気に入らないから成人式とか本当にどうでもいい。みんな同じ「人間」でいいんじゃないのと。