友人

高校の頃の友人から久々にメールが来たが、純粋に嬉しかった。彼とは大学の頃以来もう何年も顔を合わせてはいないが、定期的に連絡を寄越してくれている。いい奴だ。
僕のように周囲との関係が断絶された孤独な存在だと思いながら他人との関係を渇望している人間にとっては、こういう思いも寄らない時に受ける接触はまるで空から大きな金貨が降ってくるかのような感覚でさえある。僕を気に掛けてくれている人がいるということだけでも僕は幸せなのかも知れない。僕はまだ孤独じゃなかったのだ。
こんな僕だから、きっと「お友達商法」には引っ掛かりやすいのだろう。人との関係に餓えている孤独な人間に近付いて、親しさをやたらに振りまいておきながらその親しさを人質に高額な商品を売り付ける商法だ。かつて都内で頻繁に見られた絵売り女も、形は違えどもその類のものだろう。マルチ商法もある意味では「お友達商法」なのかも知れない。
まさか、僕にメールをくれた彼も「お友達商法」の一環で僕と接触し続けているのだろうか? そしていつか、何百万円もする高額の訳の解らない壷を買うように僕に迫ってくるのではないか? いや、違う。あいつが高校時代の思い出を金に換えるような汚い人間だとは思えない。思いたくない。
ともかく友人は大切にしないといけないな。僕はそれに気付くのに遅すぎた。友人だけじゃない、人との付き合いは全てが大切だ。もっと早くに気付いていれば、X さんや留学生とも未だに関係があったかも知れない。
孤独で格好いい一匹狼なんて、所詮作られたお話の中だけの存在でしかない。