僕は働けるのだろうか

働こうと決めたものの、僕は働けそうもない。
雑音が気になって気になって仕方がないのだ。ありとあらゆる雑音、つまり空調の音、コンピュータの作動音、車の走行音、そういった全ての雑音が聞こえることが苦しくてたまらない。他のことに集中できないほど苛立ってきて焦燥感を覚える。
それから、一度頭の中で音楽が流れ始めると、まるでそれだけしか内蔵していない音楽プレイヤーのように同じ音楽が勝手に流れ続けるときもある。それも苦しい。止まらずに流れ続けるとこのまま気が狂ってしまって思わぬ行動を取ってしまうのではないかといつも思いながら、必死に耐えている。
これは一種の強迫性障害というものらしいと自己診断しているのだけれども、あまり自分を病気だと捉えるのは気分が悪いので、以前電車乗車時の問題で相談したことのある掛かり付けの医者にも言わずにそのままにしている。それに処方されている抗不安薬を服用すれば、ほとんどの場合は雑音に囚われる不快な状態もいくらか和らいで気にならなくなるからそれでしのいでいる。
けれどもこれじゃ薬に頼りっぱなしで、自分自身あまりいい状態だとは思えない。僕が持っている資格を利用して勤められる職場は、だいたいその労働内容が人間の命と直接的間接的に掛かってくるから、抗不安薬でいくらか頭がふにゃふにゃの状態になっている人間がそういった職務を行うのはどこか心配だ。雇う側も、果たしてそんな人間を雇ってくれるのだろうか。
面接時に自分の状態をありのままに話すことも大切なのだろうけれど、採用され働くことを第一に考えれば、そういった不都合は隠して何も言わずにただ「頑張って働きます」と言っていればいいのだろう。しかし働いている最中に雑音が気になる状態になってそわそわし始めたり職務に集中できなくなったり、抗不安薬を服用してふにゃふにゃになってミスを犯したりしたらどうなるだろう。「何だお前、面接で自分の体調が万全でないのを隠しやがったな」なんて言われて即解雇と来たら困る。それが不安だ。
働いて慣れるしかない、一方でこの状態の自分を働かせてくれる場があるのかも分からない。