君が代

僕は小学校中学校高校と、何かの式の都度に国歌斉唱の機会のある時は、国歌を歌わなかった。ちょっと僕ちゃんと歌ってますよとプリテンドしてみせる程度に口パクをして、いつも実際には声は出さなかった。
別に君が代に対して軍国主義を感じるだの天皇制反対だのそんな考えを持っているわけではなかったし、学校で担任に国歌を歌っちゃいけませんなんて諭されたりとかそんな教育を受けたこともない。歌わなかったのは、ただ周りが歌っていないからだ。
周りが歌わない中で一人だけ大声を上げて歌えば、目立つ。恥ずかしい。あれこいつ何国歌なんて元気に歌っちゃってんの、とそんな目で見られる。僕は目立ちたくなかった。みんなの中にはもしかしたら国歌が侵略主義の名残だとか思っている人もいたのかも知れないが、きっと大多数は僕と同じようにただ目立ちたくないから歌わなかったというだけなんだろう。そうじゃなきゃあれだけ国歌斉唱で静まる事実は説明できない。
どうして国歌斉唱時はしーんと静まるのだろう。歴史的評価云々は抜きにして、君が代は聞く分には悪い曲じゃない。ただ、歌うにはリズムがゆったりすぎる。きーみーがーあーよーをーはー、といちいち語尾を伸ばさないといけない。単純に、歌いづらい。歌うには向いていないのだと思う。それに比べて、よくある校歌はリズムが早い。早いから歌いやすい。それに校歌は在籍時にしか歌う機会がない。特に卒業式は校歌を歌う最後の機会だ。だからここぞとばかりに声を張り上げて歌う人が多いんだろう。悲惨な思い出ばかりの人でもない限り、歌いたくなる雰囲気はあると思う。
もしかすると、国歌の歌詞の意味が不明だから、という要素もあるのかも知れない。小学生においお前国歌の歌詞の意味解るかと聞いても、正確に僕解っちゃってるもんねーなんて答えは返ってこないはずだ。子供が変な替え歌を好んで歌うのは、替え歌の歌詞に重大な意味があるからだ。意味が解らない歌は、歌おうとしない。だから意味の解らない歌詞の国歌も、歌おうとしない。歌えない。
すると国歌を卒業式に声を張り上げて歌ってもらうには、いちいち正確に歌詞の意味を教えて理解させる必要がある。どういう意味なの、先生?