手ぶらで出勤する

バッグなど持っているから暑いのだ、と大して何も考えずに思い付きで手ぶらで出勤したら、ものすごく変な感じがした。
まず駅まで手ぶらぶらと歩く。必要なものは全部ポケットに入ってしまうのだから、考えてみればバッグなんて必要なかったのだ。持つべき書類などもないし、家の鍵とスマホと財布さえあれば足りてしまう。道中は土曜日だったから人通りは少なかったが、それでも駅に向かう人や駅から来る人はいる。けれども誰も手ぶらの人間がいない。みんな何かしらバッグや鞄を持つなり背負うなりしている。手ぶらは僕一人だけだった。
電車に乗る。あ、手ぶらの人が乗ってきた、とは誰にも思われなかっただろうが、やはり変な感じだ。手ぶらで腕組みをしているのも文字通り手持ち無沙汰なので、スマホを弄る。それもすぐに飽きて、結局腕組みをしながら窓の外を眺めていた。
職場に着く。あ、あの人手ぶらで出勤してきた、とはやはり誰にも思われなかっただろうが、やはり変な感じだ。手ぶらでタイムカードを押す。遊んで帰ってきた人なんじゃないかという錯覚さえした。
結局帰宅するまで手ぶらだったが、暑さはバッグを持っているか否かなどとは全く関係がないということを示すかのように、体中に汗がダクダクと流れていた。むしろいつもよりもその量は多かった。
ただ余計な荷物を持たなくていいというのは、確かに良い面でもあるだろう。変な感じはしたが、それは慣れの問題に違いない。またやってみるか。