出会うことが必然であれば別れも必然

確かに別れは辛い。相手が誰であろうと何であろうと、辛い。
例えば普通のペットなら、確実に人間より寿命は短い。宇宙から巨大な隕石が落ちてきて一緒に生命を終えるような出来事でもない限り、生と死という概念で隔てられる別離が人間とペットとの間には確実に訪れる。そして生の側に残されるのが人間、となる場合がほとんどだろう。
永く続くかと思われた楽しい思い出の中の時間を一緒に過ごし可愛がっていたペットが、ある日突然、非日常を引き起こす渦となる。それからもう二度と会えなくなる。二度と一緒に遊べなくなる。二度とその甘い声さえ聞こえず、二度とその愛くるしい姿さえ見えなくなる。
あの楽しかった記憶は全て幻想だったのだろうか? と静かになった部屋で暗い顔をしながら考える。ふと目を横へ遣ると、私とペットとが一緒に写った写真が飾られてある。ああ、事実だったんだ。事実だった。もう今はいないんだ。
時計を見ると、そろそろご飯の時間じゃない、と何やら容器を持ってうろうろとする。この容器は何だっけ? 誰かがこの容器を持った私を嬉しそうな目で待っていなかったっけ? 何処に隠れているのかな? ご飯だよ、早くおいで? ……現実逃避。本当はもう分かっている。知っている。もうあの子のご飯の用意をする必要もないんだ。
こんなことがあったら、僕はしばらくの間立ち直れそうにない。だからペットは飼わない。きちんと世話が出来るかどうかは置いておいて。
しかし、ペットなら飼わなければ別れを経験せずに済むのだろうが、これが人間同士となると避けることができない。親戚、友人、身内。僕はこの先、何十もの別れを経験することになるのだろう。ペットのテストケースですらしばらく立ち直れないと結論付けた僕は、その別れに耐えられるのだろうか?
こんなことを考え続けているとやはり怪しい壺を買ってしまいそうだから止めよう。全ては仕方のないことなのだ。