買ったことはないけれど

小さな焼き鳥屋がある。毎晩スーパーで値引きされたパンを買う帰り道の中、軒先を借りたような狭い店から何だか香ばしい匂いを漂わせている。馴染みの客なのか、たまに店前で何人か集まって談笑をしていることもある。その客のガラは正直良いと言えるほどではないが、仲は良さげだ。
果たしてあの焼き鳥屋のロン毛の兄ちゃんはどれだけ稼げているのだろうか? とふと疑問に思った。あれだけで生きていけるのだろうか? と余計な心配をしながら計算をする。
ちらりと見た限りでは、\120 〜 \200 までの焼き鳥が十種類ほど売られていた。買う人は三串くらい買うんだろう。平均して客は \150 の焼き鳥を三串買うとすると、客が一日どれほどいるかに問題が移ってくる。あまり繁盛している様子でもなさそうだったから、人通りの多い時間でも五分に一人来ればいい方なんだろう。
午後五時から八時まで営業していると思われるが、三時間で平均して十分に一人の客が \450 の買い物をしに来るとする。とすると、450 * 18 = 8100 円。一ヶ月 25 日営業していると仮定すると 8100 * 25 = 202500 円。原価やら売れ残りやら所場代やら考えると、売り上げがこれじゃ生活するにはちょっときつい。
勝手に思うに、あの兄ちゃんは焼き鳥屋は副業としてやっているんじゃないだろうか。昼間は建築業とか、ガタイを考えるとそんな感じがしてきた。焼き鳥屋だけでは贅沢は難しくとも、それとは別に本業があるのなら非常にいい小遣い稼ぎにはなる。ブルジョワジーだ。
しかしそうだとすれば、本業を終えてなお副業に精を出すとはずいぶん根性のある人だ。僕はそんなことはできそうにない。