物足りない

物足りなさ 1200 % である。別に特定の事柄を指して何が物足りないというわけでもないが、何だか物足りなくてどうしようもない。
物足りないとは言っても、モノなら足りている。十分すぎるほど足りている。それならば物足りないと言うよりも、心足りないと言った方が的確か。しかしそんな言葉はない。広辞苑にも載っていない。
考えるに、物足りないという言葉が作られた頃は「モノが足りないこと」即ち「心が満たされないこと」だったのだろう。しかし現代はモノで溢れている。モノに囲まれることに慣れきった現代人は、モノに埋もれてなお心が満たされないことに気付く。欲望には際限がない。童話に現れる豆の木のように、欲望はどこまでもどこまでも伸び続ける。かくして、心が満たされないことを示すのには「物足りない」という言葉では物足りなくなったのだ。
くだらね。僕の中の豆の木は、一体何を求めて伸び続けているのだろう? いっそ根元から切り落とした方が幸せになれるんじゃないかとさえ思えてきた。