下痢

夜にエアコンでギンギンに冷えた部屋で冷たいコーヒーや烏龍茶を飲んではいけない。おかげで夜中になって執拗な腹痛を催しトイレを何往復もする羽目になった。僕はひどい腹痛のあまりもうこのまま気が狂って死んでしまうかと思った。
普段「下痢」とたったの二文字に蔑んだ感情さえ込めて軽く言っているが、実際に下痢に襲われるとそんなに軽く軽蔑されるものじゃない。下痢は恐怖だ。かつ惨めでもある。誰にも気を掛けられることもなく夜中に一人トイレと部屋とを行ったり来たりし、便座の上で腹痛に耐えながら普段とは違う異様な排泄を繰り返す。そこには何の本能的な快感はない。
幾度もトイレ参りを繰り返した末に腹痛も収まったかと寝床に就こうとして、あらためて気付いてみれば部屋は馬鹿みたいに寒かったので、僕は厚い毛布を掛けて寝た。暖かくて気持ちが良かった。そうして起きたら薄暗い部屋にはもう寒さも適度な快適さもなく、むしむしとした心地悪い空気に取って代わられていた。毛布にくるまれた身体は当然嫌な汗まみれになっていた。下痢も止まっていた。